見出し画像

シリーズ「受賞者に聞く」第50回日本ケーブルテレビ大賞番組アワード、最優秀新人賞受賞者 イッツ・コミュニケーションズ株式会社 佐藤瑞希さん

あけましておめでとうございます。
日本ケーブルテレビ連盟では、業界での番組制作力の向上を目指して番組コンクールを1975年から毎年実施してきました。今年度で50年、50回目を迎えました。第50回の応募総数は190作品、新人賞部門は32作品がエントリーされました。今回は最優秀新人賞に輝いた佐藤瑞希(さとうみずき)さんにお話をお伺いしてきました。

イッツ・コミュニケーションズ株式会社の佐藤さんは、2018年の新卒入社以来、カスタマーセンターで6年間の実績を重ねてきました。
2023年4月制作部門へ異動、そして着任からわずか3日目、一本の特別番組の制作を任されることに。 その作品が、見事に最優秀新人賞を受賞されました。今回のインタビューでは、異動から受賞までの軌跡と、そこに秘められた思いをお伝えいたします。

佐藤瑞希さん イッツ・コミュニケーションズ本社にて

佐藤さんのキャリアの歩み

入社時の配属はカスタマーセンター

2018年、佐藤さんは新卒でケーブルテレビ業界に飛び込みました。社会人として初めに配属されたのは、顧客対応やサービスの最前線であるカスタマーセンターでした。

電話応対や顧客サポートが主な業務でしたが、日々多様な問題に直面しながら、柔軟な対応力と問題解決力を磨きました。2年目にはSV(スーパーバイザー)に昇進し、チームをまとめる役割を任されました。この経験は、リーダーシップや責任感を深める貴重な機会となりました。

佐藤さん

番組制作の世界へ

入社6年目のある日、思いがけない異動の辞令が下り、佐藤さんは制作チームへの配属を命じられました。

制作チームに新卒社員が異動するのは珍しいことでした。当初は戸惑いましたが、新しい世界への興味もありました。着任3日目に上司から「番組を作ってみて」と言われ、そこから全く未経験の制作業務に挑戦することになりました。

佐藤さん

上司である神林部長は、この異動について次のように語ります。

制作部門は年齢層が高く、新しい視点を取り入れることが必要でした。佐藤さんのコミュニケーション能力と柔軟な発想力に期待して、このポジションを任せました。結果として、彼女の努力が素晴らしい成果につながり、組織全体にも刺激を与えたと思います。

神林部長
上司の神林部長と、受賞者の佐藤さん

着任1週間で、初仕事はドキュメンタリー

制作チームに異動して最初に手掛けたのは、東急電鉄の電車移設に関するドキュメンタリー番組でした。このプロジェクトは、単なる制作業務ではなく、企画から取材、編集、さらにはナレーションまでを一手に引き受ける大仕事でした。

通常のニュースの制作もしてないのに特番もやるというプレッシャーがすごすぎて、30分の番組をつくれるかどうか?という思いがまずありました。
現場取材は着任1週間後からスタートしました。慣れない外回りに加えて、雨の中でのロケや取材対象者との調整、スケジュール管理など、全てが初めての経験で、試行錯誤の日々でした。

佐藤さん

神林部長は、佐藤さんの仕事ぶりを次のように振り返ります。

正直、初めは負担が大きすぎたかもしれないと心配しました。しかし、彼女は自分で計画を立て、困難を乗り越える力を見せてくれました。制作チーム全体も彼女の頑張りに触発され、サポート体制を強化していました。

神林部長

取材対象者との交流や現場対応を通じて、番組制作の魅力と難しさを実感したと言います。

電車移設プロジェクトを支える方々の熱意や想いに触れる中で、このテーマをどのように視聴者に伝えるかを真剣に考えました。プロジェクトの背景や人々の想いを深く掘り下げることで、単なる情報提供ではなく、感動を共有できる作品を目指しました。

佐藤さん
車両の移動費を含めた総費用7500万円以上のプロジェクト。
クラファン目標金額2900万円のところ5000万円以上を調達し計画が具現化されました。

受賞作品「ハチゴープロジェクト ~引退車両のセカンドライフ~」

作品の概要

佐藤さんが手掛けた受賞作品は、移設される電車と地域住民のつながりをテーマにしたドキュメンタリーです。この作品は、東急電鉄から依頼を受けた特別企画で、地域コミュニティの魅力や可能性を伝える内容でした。

声優さんとかナレーターさんの綺麗なナレーションよりは、自分で声を当てることで制作者としての視線や思いが入れやすくなり、番組で伝えたいテーマをストレートに視聴者に届けられるのではないかと考え、ナレーションを自分で担当しました。
視聴者に寄り添い、プロのナレーターではない分、素朴で温かみのある語り口を意識し、物語をより身近に感じてもらえるよう工夫しました。

佐藤さん

制作で重視したこと

番組構成や編集作業を進める中で、視聴者に響く作品を作るための工夫を凝らしました。

取材で得たエピソードをいかに構成し、視聴者に最も伝わりやすい形に仕上げるかに苦心しました。
特に、「鉄道車両の第二の人生」という主テーマと、取材を通して明らかになってきた主人公・諏訪さんの物語(次男の仙周くんと一緒にハチゴーを一緒に見るという約束、プロジェクト進行中に仙周くんが白血病で急逝してしまったこと、それでも諏訪さんが約束を果たしたこと)を、30分という限られた尺に収める作業は大変でしたが、達成感も大きかったです。

佐藤さん
諏訪さんと、次男の仙周くんの遺影。諏訪さんは仙周くんとの約束を果たしました。

完成した作品を見たとき、佐藤さんの熱意と努力が画面を通じて伝わってきました。特に彼女自身がナレーションを担当することで、視聴者に作品のメッセージをより直接的に届けることができたと思います。このような成果を生み出す彼女の姿勢には敬意を表します。

神林部長

現在の活躍と未来への展望

受賞後の変化

受賞後、佐藤さんの仕事に対する周囲の期待や注目度が一層高まりました。

社内外から多くの祝福をいただき、自分が作った作品が評価される喜びを実感しました。同時に、次はさらに良い作品を作りたいという意欲も湧いてきました。

佐藤さん

神林部長は、彼女の成長を次のように述べています。

受賞は彼女個人の成果であると同時に、組織全体の励みとなりました。今後も新しい挑戦を続け、業界の未来を切り開く存在になってほしいです。
佐藤さんに続け!と他部署から、制作部門へ人員を毎年アサインするようになりました。

神林部長

将来の目標

佐藤さんは、現在の制作業務に加えて、新しい形式の動画制作や地域の魅力を発信するプロジェクトにも挑戦したいと考えています。

今、動画制作の形は大きく変わっています。縦型動画やショート動画など、新しい表現方法が次々と生まれている。この変化の時代だからこそ、若い感性を活かせるチャンスがたくさんあります。
休日には自分の小型カメラ(OSMO)を持って街に出かけ、新しい映像表現を研究する日々。 仕事とプライベートの境界線を一時的に作ることで、両方が刺激し合って、新しいアイデアが生まれるんです。

佐藤さん
旅先でもOSMOが活躍

就活生や新入社員へのアドバイス

『興味を持ったらとりあえずなんでもチャレンジして欲しい』という事です。たとえば習い事や趣味など、幸いにも上手く(長く)続いたことの他、少しだけやってみてやめてしまったこと(途中で挫折してしまったこと)も『実はその先の人生のひょんなところでスキルとして生きる瞬間がちょいちょいあるよ!』という事をお伝えしたいです。
今までやって来たことって、意外とその後活かされることが多いと思って...
その日その瞬間はまた来ません。後悔せず、可能性として前向きに可能性に向かって踏み出してください。必ず誰かが応援してくれます。

佐藤さん

むすび

カスタマーセンターから番組制作へ。予期せぬ転機が、新たな才能の開花をもたらしました。佐藤さんの挑戦は、制作部門に新しい風を吹き込んでいます。
従来の放送の表現を超え、新しい時代の映像表現を見据える佐藤さんの作品を是非ご覧になってください。


番組はこちらから、2025年8月までの期間限定でご視聴いただけます。
イッツコム日曜セレクション 
「ハチゴープロジェクト ~引退車両のセカンドライフ~」

第50回日本ケーブルテレビ大賞 番組アワード



ライター  事務局クボタ